極端な幅寄せ、車間距離を詰める、わざとブレーキをかけて後方車両に迷惑をかけるあおり運転。
2017年6月に東名高速道路で起こったあおり運転による死亡事故がありました。
しつこくあおり運転を受けていた被害者が無理やり停車させられた結果、後続のトラックに追突され起きた事故です。
この事故を受けて2020年6月より道路交通法が改正され、現在はあおり運転に対して厳罰が科せられるようになりましたが、今でもあおり運転は起こっています。

あおり運転の危険性

警察庁のあおり運転に関するアンケートによれば、過去1年間に3人に1人があおり運転の被害を受けています。
あおり運転をされた場所は一般道が7割、高速道路が3割で、被害内容は後方からの急接近が8割というデータになっています。
車の走行を妨害するあおり運転は、重大な事故につながる悪質で危険な行為です。

あおり運転の罰則

2020年6月に道路交通法が改正されるまで、主に車間距離不保持や急ブレーキ禁止違反、刑法による暴行罪が適用され、あおり運転を取り締まる法律はありませんでした。
そのため、あおり運転を取り締まる「妨害運転罪」が創設されます。
ほかの車の通行を妨げる目的で行われるあおり運転に対して厳しい取り締まりの対象となりました。
取り締まりの対象となる妨害運転は以下の通りです。

違反による罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。基本点数は25点と酒気帯び運転と同様です。
また、高速道路で相手車両を停車させるといった場合、著しい危険が生じたとして「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。基礎点数35点と酒酔い運転と同じ点数です。
あおり運転をすると事故を起こさなくても免許を取り消されることになります。

怒り

あおり運転する人の心理

どうして人はあおり運転をしてしまうのでしょうか。あおり運転をする人の多くは自分の運転を邪魔されたと思ったとき、仕返しするために周りが見えなくなります。
何か些細なきっかけでもあおり運転をしてしまうのです。
ほかの車両に追い越されただけで執拗に追う、軽自動車やバイクだからという理由であおり運転する人もいます。
運転時は相手から顔が見えにくい環境なので、職場や学校のように常識的な振る舞いをする必要がありません。そのため、その人本来の性格が出てきやすい状況になっています。
どちらにせよ、あおり運転する人は衝動的な行動を抑えられない傾向にあります。
また、SUVや高級車に乗っていると、車の大きさ=自分の強さと思い込んでしまうようです。
あおってきた車の多くはセダンやバン、トラックなど大きめの車が多く、あおられた車の多くは軽自動車やコンパクトカーとなっています。
また、カラーもピンクやホワイトだと、女性が乗っている車ということであおられる傾向にあります。

自分があおり運転をしないためには

運転をしていると相手車両に対してイラッとする場面はあると思います。普段は問題なくても疲れや焦りがあると苛立ちを覚えるかもしれません。
そのつもりはなくてもあおられるような運転をしている人に問題があります。しかし、そこであおり運転をしても免罪符とはなりません。
2016~2017年の公益財団法人国際交通安全学会のデータによると、あおり運転のきっかけの多くは運転の邪魔をされたという思い込みによるものです。
しかし、中にはたまたま追い越し車線を走り続けていたリ、割込み先の後続車に気づかなかったりと、意図していない場合もあります。
運転中、思わずイラッとしてしまった場合、深呼吸して時間をあけて運転することをおすすめします。
近くのコンビニによってコーヒーを飲んで気を紛らわせるようにしましょう。

あおられるきっかけを作らないためには

普通に運転しているつもりでもあおり運転にあったことはありませんか。
運転中は相手の表情は確認できず、会話によるコミュニケーションが取れないため、運転態度によって相手に誤解を与えてしまいます。
あおられるきっかけを作らないためには、十分な車間距離を保ち、ウィンカーは早めに出す、進路は譲るといったゆとりを持って相手を思いやる運転が大切です。
あおり運転されたきっかけとして車線変更によるものが一番多いため、車線変更をする場合は進行先の車をよく確認し、距離を十分にとるようにしましょう。
次に多いのが高速道路で追い越し車線を走り続けたというものです。一番左側の車線を走り、追い越し車線は前の車を追い越す場合のみ利用するようにしてください。

あおり運転に遭遇したら

実際にあおり運転に遭遇してしまったら、冷静な運転を心がけましょう。
すぐに道を譲ってやりすごすことが大切です。あおられているときはパニックになるかもしれませんが、落ち着いて車を停められる場所にいったん停車し、相手を先に行かせます。
追い抜かれたら、あおってきた車と十分に車間距離をとって急停止に備えます。
もし、赤信号の場面で相手が車から降りてくると何をしてくるかわからず大変危険です。
車を停車する場合は、窓は閉めてドアはロックして警察に通報を。停車はコンビニやパーキングエリアなど人目のある場所を選ぶといいでしょう。
しつこく追ってくるようであれば、停車した後に警察を呼び対処してもらいます。

あおり運転されたからといって相手を挑発するのはかなり危険です。
急ブレーキをかけたり、スピードを落としたりと仕返しをするような行為は絶対にやめましょう。
同乗者がいれば110番通報、相手のナンバーを控える、相手を刺激しないように動画を撮影してもらうといいでしょう。

あおり運転を自衛するためのドライブレコーダー

ドライブレコーダー

あおり運転の厳罰化によって影響を受けたのがドライブレコーダーです。これまではタクシーやトラック、バスといった商用車が中心でしたが、あおり運転に対抗する自衛手段としてドライブレコーダーが売れています。
ある大手自動車用品店によるとドライブレコーダーの売上が前年比で35%も増えたそうです。
ドライブレコーダーは、価格の安さからフロント(前方)カメラタイプ、または後方からのあおり運転に有効な後方も録画する前後2カメラタイプが主流でしたが、最近では全方位を撮影できる360度カメラを選ぶ人が増えてきました。

ドライブレコーダーのタイプ

ドライブレコーダーの各種類「フロントカメラ」「前後2カメラ」「360度カメラ」にはそれぞれ、メリット・デメリットがあります。
フロントカメラのメリットは価格の安さで、通販サイトでは5,000円以下のモデルが発売されています。
電源も12Vのソケットを繋ぐだけとシンプルな構造です。モニタと一体型になっていることから、その場で録画をチェックするメリットもあります。
デメリットとしては前方しか録画できないため、後方や側面からの嫌がらせは記録できません。
このデメリットを解消したのが前後2カメラのタイプです。後方も録画できるため、死角を減らすことができます。
デメリットは配線が複雑になるため、設置は業者にお願いすることになるでしょう。また、側面が死角になってしまうので、幅寄せや横からの衝突の対策としては十分とはいえません。
そして、全方位の死角をなくし対応できるのが360度カメラのタイプです。ただし、モニタが装備されていないモデルがほとんどで、確認には手間がかかります。

ドライブレコーダー購入時にチェックしたいポイント

事故の際に証拠となるドライブレコーダーは、相手のナンバープレートが読み取れるかが重要です。できるだけ画質の良いドライブレコーダーを選びましょう。
画質については解像度と画素数で表されます。解像度だと1920×1080(フルHD)以上、画素数は200万画素以上を目安に選ぶといいでしょう。
また、ドライブレコーダーの画角には水平画角、垂直画角、対角画角の3つがあり、中でも重要なのが水平画角です。108度以上のものを選ぶようにしてください。

HDR/WDRは黒潰れや白飛びを抑える補正機能です。夜間やトンネルの出口など、事故が起こりやすいとされる状況では、明るい場所と暗い場所の差が大きく黒潰れや白飛びが起きやすい環境でもあります。
万が一の事故やトラブルを録画するドライブレコーダーには必須な機能といっていいでしょう。

事故が多いのは交差点での出会い頭です。その際、信号が何色だったのかは重要な情報になります。しかし、古いドライブレコーダーの場合、撮影した映像から信号の色がわからないという現象が問題になりました。
原因はLED信号機の周波数とドライブレコーダーのフレームレート(1秒間に撮影するコマ数)が同調してしまうためでした。
近年販売されているドライブレコーダーはLED信号機対応となっているモデルが増えています。

その他にも押さえておきたい機能としては耐熱温度です。ドライブレコーダーのような電子機器は熱に強くありません。
しかし、夏になると車内は高熱になります。JAFの調査によると外気温を30度超える場合、車内の温度は50度を超えるそうです。
特にフロントガラスに装着することが多いドライブレコーダーは高温にさらされた状態です。熱暴走を起こさないためにも動作温度範囲が60度程度の商品を選ぶといいでしょう。

ドライブレコーダー以外のあおり対策機能

自動車メーカーも、あおり運転対策に力を入れています。日産自動車の新型車には「SOSコール」、トヨタ自動車やホンダは車両に搭載できる「ヘルプネット」といった緊急通報システムを導入。
急病や危険を感じたらときにボタンを押すとオペレーターとハンズフリーでやりとりできるというものです。

死亡事故にもつながる恐れのあるあおり運転。厳罰化され取り締まりも強化されていますが、それでもあおり運転の事例は後を絶ちません。
あおり運転をしない・させない意識を持って運転することが重要です。